代かき 4月21日〜30日

このサイトに書かれていることは平成16年度に記したものであり、年を追うごとに微妙にやり方が変わっています。
しかし、基本的には同じ考え方で作業をしています。                       平成29年5月19日 記
いよいよ、田植えの準備の最終工程であり、人によっては田植えより春を告げるイベントであるということもある。
田んぼに水をはり、土と一緒にかき混ぜて泥田をつくる。
この水はアルプスの雪融け水である。春になってこの融けた水を使うことができるのは、まさに自然の贈り物である。
残雪の残るアルプスを見ながら、春の暖かい日差しの中で「代かき」をするのは、言いようのない爽快感であった。
アルプスの山並みと代かきの様子の写真を見ながら、爽快感を想像してみてください。

代かきの作業には重要なことがある。それは、同じ作業を2回行うことである。
すなわち、土と水を一緒にかき混ぜて泥田をつくるためトラクターにて作業をした後、3日間くらい時間をおいて
再度同じことを繰り返す。こうすることにより昨年から田んぼにある稲藁や稲株及び肥料が、より良く交じり合うのである。
さらに、泥土もよりきめ細かくなり稲の成長が良くなり、収穫量の増大を期待することができる。
したがって、4月21日から30日までの長い間作業を続けたように思われるが、実は同じ作業を2回しているのである。

また、この作業をするとき留意しておかなければならない点がある。
それは、田んぼの表面の高さを同じようにするため、トラクターの回転部の上下位置を土の高低の違いにより変化させ
凸凹がないように配慮しつつ作業を進める。
さらに、トラクターの進行方向の工夫により泥土を高いところから低いところへ移動させる事もある。
田んぼの隅、及び端は泥がたまって高くなってしまうことが多いが、トラクターでは調整作業ができないので、
手作業で平らにする。さらに、トラクターの車輪跡などが残っていたらこれまた手作業で平らにする。(写真参照)
これらの作業も体で覚えないとなかなかうまくいかない。ノウハウである。
何も考えずに綺麗なアルプスを見て、楽しみながらトラクターに乗っているだけではないのである。!!??

余談ではあるが、代かきのことを「ふまあせ」ということがある。カンポおじさんが子供の頃は代かきなどと言うことはなく
「ふまあせ」と言っていた。この言葉は、昔 代かきには牛馬を使い田んぼの中の土を踏ませながら泥田を作ったこと
から・・・「踏ませる」から・・・きているのではないかと思う。
ちなみに、カンポおじさんが子供の頃の「ふまあせ」は、回転する歯車のようなもののついた台車を牛に引かせて
(カンポおじさんの家では牛を使っていた)その台車の上に、錘のための石と牛の運転手(?)のために人間が乗り、
田んぼの中をぐるぐる回っていた。
この運転手の役を、カンポおじさんもしたことがある。
今年 トラクターを運転していたら、なぜか、懐かしく思い出して、昔の牛を相手にしているときと同じような感覚になった。

「ふまあせ」という言葉を、最近はあまり聞かなくなった。むしろカンポおじさんのほうが、無意識で使っていることに驚いた。
なお、おじいさん、おばあさんからも「ふまあせ」と言う言葉は聞かれなかった。
「代かき」とも言わず、「田んぼをこなす」と言っていた。この言葉は「こなす 【熟す】」からきている。
国語辞典によると、
(1)食べた物を胃腸で消化する。
「食べた物を―・す力がない」
(2)大きな物を砕いたりして細かくする。
と書いてあった。まさに、稲の苗が養分を吸収しやすいように、土を砕き消化させるのである。 的を得た言葉だ。

だが、しかし カンポおじさんは未だに、「ふまあせ」の方が大自然に合っているようで好きだ。
使い続けていこうと思う。
 
耕した田んぼに水をはる 向かって右が代かき前、左が代かき後の様子
    
代かき前 代かき後
    
トラクターで代かき後、端や隅を手動で平らにする。そのための道具を『田こすり』という。(田んぼの表面をこする道具。。という意味である)
田植えまでのすべての準備ができた田んぼ。。。言わば田植え前の『水田』である。
代かきの様子
アルプスを見ながらの代かきの様子です。